派遣社員から事業責任者になるまでの5年間で、私が一貫してやってきたことがあります。
できないことや、やったことがないことを振られたときに、「やらせてください」「できます」と先に言うことです。言ってから、できるようになるまで学ぶ。この順番でした。
この記事では、その実例と、言ったあとに苦労した話、そしていまの時代の学び方を書きます。
なぜ、先に言うのか
多くの人は、順番が逆です。できるようになってから、手を挙げようとする。
でも、チャンスは準備ができた人のところに来るわけではありません。その場で手を挙げた人のところに行きます。「勉強してから挑戦します」と言っている間に、その席は埋まります。
もうひとつ理由があります。人は、締め切りと責任がないと、本気で学べません。「いつか役に立つかも」で始めた勉強は続きませんが、「来月までにこれを動かさないといけない」となれば、嫌でも身につきます。先に引き受けることは、自分に学ぶ理由を作ることでもあります。
私が「できます」と言ってきたこと
実際に、やったことがない状態で引き受けてきたものを挙げます。
マネジメント職への抜擢。 派遣先で「マネージャーにならないか」と声をかけてもらったとき、私にマネジメントの経験はありませんでした。23歳で、部下を持ったこともない。それでも引き受けました。
GASでの業務の自動化。 関数もGAS(Google Apps Script)も、最初から書けたわけではありません。自動化すると決めてから、ひたすら検索して覚えました(詳しくは派遣社員から3か月で正社員になるまでにやったことに書いています)。
AIを使った業務の自動化。 いまの仕事では、AIにコードを書かせる、いわゆるバイブコーディングで業務を自動化しています。これも、やり方を知っていたから始めたのではなく、やると決めてから身につけました。
数値分析から、定例報告用の資料作成までの自動化。 数字を集めて、分析して、報告用の資料にまとめる。この一連の流れを自動化する仕事も、引き受けた時点では、全部をつなげるやり方は分かっていませんでした。
どれも、引き受けた時点では「できる」状態ではありませんでした。「できるようになる」と決めて、引き受けただけです。
言ったあと、苦労したこと
うまくいった話だけを書くと嘘になるので、苦労した話も書きます。
いちばん苦労したのは、マネジメントです。
マネジメントの経験がなかったので、自分とタイプの違う部下に、どうアドバイスし、どう関わればいいのかが分かりませんでした。 自分がうまくいったやり方を、そのまま伝えても通じない。自分と同じタイプの人にしか、届く言葉を持っていませんでした。
さらに、部下のほとんどが年上でした。 23歳、24歳の人間が、自分より社会人経験の長い人たちに指示を出し、評価をする立場になる。当初は、コミュニケーションのスキルがまったく追いついていませんでした。
関数やコードは、調べれば答えが出ます。でも人との関わり方は、検索しても答えが出ません。引き受けてから、いちばん時間がかかったのはここでした。
それでも、引き受けなければ、この苦労をする機会そのものがありませんでした。苦労したぶんだけが、いまの自分のマネジメントの土台になっています。
「できます」と言っていいとき
何にでも「できます」と言えばいい、という話ではありません。私が引き受けるかどうかを決めるとき、考えているのは2つです。
1. 学べば届く距離にあるか。 いまの自分から見て、必死にやれば期限までに届く距離かどうか。まったく見当もつかないものまで引き受けろ、という話ではありません。ただ、たいていの仕事は、思っているより近くにあります。
2. 言ったあと、本当に学ぶ時間を使うか。 「できます」と言うのは簡単です。大事なのは、そのあと、できるようになるまで実際に学ぶことです。ここをやらないと、ただの口だけの人になります。私は派遣社員のとき、1日2時間を学習に充てていました。
いまは、学ぶコストが一気に下がった
私がGASを覚えた頃は、ひたすら検索するしかありませんでした。いまは状況がまったく違います。
私はYouTubeやXで、最新の情報を追うようにしています。ただ、基本はもっと単純です。ClaudeやChatGPTと壁打ちを続けていれば、必要な最新の情報にはたどり着けます。 分からないことを聞き、返ってきた答えに対してさらに聞く。これを繰り返すだけです。
AIの活用というと、「プロンプトが大事」「質問力が大事」とよく言われます。でも私は、必要なのは特別な技術ではないと思っています。
AIの活用に必要なのは、コミュニケーション能力と、論理的思考能力です。
自分が何をしたいのかを、相手に分かるように伝える。返ってきた答えのどこがおかしいかを、筋道立てて考える。これは、人と仕事をするときに必要な力と同じです。
つまり、「できます」と先に言ってから学ぶ、というやり方は、いまがいちばんやりやすい時代です。学ぶのにかかる時間が短くなったぶん、引き受けられるものの範囲が広がりました。
まとめ
- できるようになってから手を挙げる、では遅い。席は、先に手を挙げた人に回る
- 先に引き受けることは、自分に学ぶ理由と締め切りを作ることでもある
- マネジメントも、GASも、AIでの自動化も、引き受けた時点ではできなかった
- いちばん苦労したのは人との関わり方。タイプの違う部下、年上の部下。これは検索しても答えが出ない
- 言っていいのは、学べば届く距離にあるとき。そして、言ったあとに本当に学ぶこと
- AIのおかげで、学ぶコストは一気に下がった。必要なのはコミュニケーション能力と論理的思考能力



