23歳のとき、私はコールセンターの派遣社員でした。年収は260万円です。
その会社で、3か月後に正社員に登用され、半年後に現場のマネージャーになりました。
「何か特別なことをしたんですか」と聞かれることがありますが、やったことは地味です。この記事では、その3か月に実際にやったことを、順番に書きます。
前提:なぜ、その会社で上を目指したのか
当時の私は「30代前半で年収1000万」という目標を決め、そのために「企業の幹部になる」という道を選んだところでした。幹部になるには、まずマネジメント経験が要ります(道の選び方は5つのルートの記事に書きました)。
でも、新卒の会社を1年で辞めた派遣社員を、管理職候補として雇ってくれる会社はありません。
一方で、派遣先の会社は、マネジメント層が定着せず、人が足りないと困っていました。
外で席を探しても見つからないなら、目の前の空席に座ればいい。ここでマネージャーになれば、「23歳・派遣社員」という肩書きを「23歳・マネージャー」に書き換えられる。そう考えて、この会社で上を目指すことに決めました。
やったこと1:質問と提案を、セットで持っていく
課長と話すようになったきっかけは、業務中の質問でした。
ただ、質問だけで終わらせませんでした。「ここが分からないので教えてください」に加えて、「ここはこうしたら楽になると思うのですが、どうでしょうか」という業務改善の提案を、一緒に持っていくようにしました。
派遣社員が課長と話す機会は、放っておくとほとんどありません。質問は、その機会を自分から作るいちばん自然な方法です。そこに提案を添えると、「言われたことをやる人」ではなく「仕事を良くしようとしている人」として覚えてもらえます。
やったこと2:毎日1時間の集計を、10分にした
最初に手をつけたのは、日報の報告と、オペレーターへのフィードバックに使う分析でした。
当時は手作業で集計していて、毎日1時間かかっていました。これを関数とGAS(Google Apps Script)で自動化して、10分で終わるようにしました。
1日50分の短縮です。小さく見えますが、毎日のことなので、月にすれば十数時間になります。しかもこの種の作業は、誰もが面倒だと思いながら、誰も手をつけていないことが多い。
ポイントは、提案で終わらせず、自分で動くものを作って持っていったことです。
立場の弱い人間の「こうしたらどうでしょう」は、たいてい「検討します」で終わります。でも、すでに動いているものを見せられると、断る理由がありません。使ってみて便利なら、そのまま採用されます。
やったこと3:研修の工数を、半分にした
次に手をつけたのは、新しく入った人向けの導入研修です。
初日から3日目までの研修を、動画の視聴と質疑応答を組み合わせた形に変えました。それまで人がつきっきりで説明していた部分を動画に置き換え、人が対応するのは質疑応答に絞る。これで、研修にかかる工数が半分になりました。
人の入れ替わりが多い職場では、研修は何度も繰り返される仕事です。繰り返される仕事ほど、一度仕組みにしてしまえば効果が積み上がります。
学び方:ひたすら調べた。1日2時間
関数もGASも、最初から書けたわけではありません。やり方は単純で、ひたすらネットで検索しました。学習に充てたのは、1日2時間ほどです。
「やりたいこと」を先に決めて、それを実現する方法を調べる。できたら次の「やりたいこと」に進む。教科書を最初から読むのではなく、目の前の業務を題材にして、必要なところだけを覚えていきました。
いまなら、AIに聞けば一発です。私が何時間もかけて調べていたことが、数分で形になります。当時よりもずっと、成果を出しやすい時代になりました。関数やコードが書けるかどうかは、もう壁ではありません。壁は「何を楽にするか」を見つけられるかどうかだけです。
周りを敵にしないために、意識した2つのこと
派遣社員が入ってすぐに業務を変え始めると、反発されることもあります。私が意識していたのは、この2点でした。
- コミュニケーションを密に取って、周りの困りごとを解消する
- ひとりで進めず、協力を仰ぎながら進める
自分のやりたい改善を押し通すのではなく、周りが実際に困っていることを聞いて、それを解消する。進めるときは「手伝ってもらえませんか」「意見をください」と巻き込む。
そのおかげで、周りの反応は非常に良かったです。改善は、周りの人にとって「自分の仕事が楽になること」でなければ、続きません。
結果:会社のほうから声がかかった
こうした取り組みを続けていたところ、会社のほうから「マネージャーにならないか」と声をかけてもらいました。
入って3か月後に正社員に登用され、半年後に現場のマネージャーに。その後、1年半で課長代理になり、25歳のときには配下100人超の組織を見るようになっていました。年収は500万円になりました。
自分から「正社員にしてください」と頼んだわけではありません。成果を積んでいたら、向こうから席を用意してもらえた、という順番でした。
同じことをやるなら
派遣でも、契約社員でも、入社したばかりの正社員でも、立場が弱いうちに使えるやり方だと思います。手順にするとこうなります。
- 困りごとを探す。 狙い目は「毎日やっている」「手作業」「みんなが面倒だと思っている」の3つが揃った仕事
- 小さく作って、動くものを見せる。 提案書ではなく、実際に動くものを持っていく。いまはAIがあるので、作るハードルは当時よりずっと低い
- 周りの困りごとを解消する形で進める。 自分のやりたいことではなく、周りが楽になることを優先する。協力を仰ぐ
- 成果を数字で言えるようにしておく。 「1時間が10分になった」「工数が半分になった」。数字は、あとで自分の実績を説明するときの武器になる
まとめ
- 外に席がないなら、目の前の空席を狙う。困っている職場は、立場の弱い人にとっては入口になる
- 質問と提案をセットで持っていく。話す機会は自分で作る
- 提案で終わらせず、動くものを作って見せる
- 周りの困りごとを解消する形で進めれば、反発は起きにくい
- 成果を積めば、席は向こうから用意される



