25歳のとき、私は配下100人超の組織を見る課長代理で、年収は500万円でした。この実績を持って、スタートアップや中小企業の幹部求人を受けました。
面接で言われたのは、決まってこの一言です。
「若いのにすごいね」
私は最初、褒められていると思っていました。でも、結果は全部落ちました。あとから分かったのは、この言葉は褒め言葉ではなく、疑いの表明だったということです。
「すごいね」は、話が終わった合図
面接官が本当に興味を持ったときは、「すごいね」では終わりません。質問が来ます。
- 100人の組織で、いちばん困ったことは何ですか
- 部下が動かないとき、どうしましたか
- うちの会社に入ったら、最初の3か月で何をしますか
こういう質問が来ないまま「若いのにすごいね」で次の話題に移ったら、面接官の頭の中では、もう判定が終わっています。「本当かな」「うちで再現できるのかな」という疑問を、口に出さずに飲み込んで、話を切り上げている。
私の場合、目がそう言っていました。「すごいね」と口では言いながら、その目は笑っていませんでした。
なぜ疑われたのか
いま振り返れば、疑われて当然でした。理由は3つあります。
1. 経歴が「できすぎている」ように見えた。 新卒の会社を1年で辞め、派遣社員になり、そこから2年で課長代理。本人にとっては必死に積んだ実績でも、初めて会う人から見れば、話ができすぎています。しかも、それを確かめる手段が相手にはありません。
2. 数字は言えたが、中身を語れなかった。 「100人を見ていました」「3か月で正社員になりました」。数字は言えました。でも、企業理念に沿った話はできず、自分なりのマネジメント論もありませんでした。「何をしたか」は言えても、「どう考えて、どう動かしたか」を語る言葉を持っていなかった。幹部としては未熟だったと思います。
3. 実績と信用は、別物だった。 実績は自分の中にあります。でも信用は、相手の中にしか生まれません。私は「実績があれば信用される」と思い込んでいました。実際は、実績を「信用できる形」で見せない限り、疑いは消えません。
「すごいね」の裏にある3つの疑問
面接官が「若いのにすごいね」の裏に隠している疑問は、だいたい次の3つです。
- 本当か。 その実績は、盛っていないか。環境が良かっただけではないか
- 再現できるか。 うちの会社でも、同じことができるのか
- 一緒に働けるか。 年上の社員が多い組織で、この若さでやっていけるのか
私は、このどれにも答えを用意していませんでした。聞かれなかったからです。でも、聞かれないからこそ、自分から答える必要がありました。
1年後、疑われなくなった理由
私はその後、誰もが知る大企業に1年在籍し、あらためて転職活動をしました。そのときの面接では、あの目を向けられることは、もうありませんでした(経緯は「大企業の看板」という仮説の記事に書いています)。
変わったのは、2つです。
「本当か」に、看板が答えてくれた。 大企業の採用を通ったという事実が、私の代わりに「一定の水準を超えている」と証明してくれました。初対面の相手が確かめられないものを、確かめなくても信じられる材料に置き換えた形です。
「再現できるか」「一緒に働けるか」に、言葉で答えられるようになった。 大企業の1年で、企業理念を現場に落とし込むこと、管理職がそれを自分の言葉で語ること、マニュアルと規則を作り込んで徹底することを学びました。これは、幹部求人の面接で私に足りなかったものそのものでした。数字の裏にある「どう考えて動かしたか」を、ようやく語れるようになりました。
「すごいね」で終わらせないために
もし面接で「若いのにすごいね」と言われたら、そこで会話を終わらせないでください。褒められて引っ込むのではなく、相手が飲み込んだ疑問に、自分から答えにいく。
- 「本当か」には、具体で答える。 数字だけでなく、いちばん困った場面と、そのとき何をしたかを話す。盛っていない実績は、細部を語れます
- 「再現できるか」には、相手の会社の言葉で答える。 応募先の理念や課題を読み込み、自分の経験のどこがそれに使えるかを、相手の言葉で説明する
- 「一緒に働けるか」には、失敗で答える。 うまくいった話より、年上の部下とぶつかった話や、最初にうまくいかなかった話のほうが、人柄は伝わります
そして、面接の前にできることがひとつあります。信用の材料を、先に作っておくこと。 私にとってそれは大企業の看板でしたが、資格でも、社外の実績でも、誰かの紹介でもかまいません。「本当か」を相手が確かめなくて済む材料を、面接の前に用意しておく。
まとめ
- 「若いのにすごいね」は褒め言葉ではなく、疑いを飲み込んで話を切り上げた合図
- 裏にある疑問は3つ。本当か、再現できるか、一緒に働けるか
- 実績と信用は別物。実績を「信用できる形」で見せない限り、疑いは消えない
- 数字だけでなく、どう考えて動かしたかを語る言葉を持つ
- 面接の前に、相手が確かめなくて済む信用の材料を作っておく
「すごいね」と言われて嬉しかった25歳の私は、その面接で何が起きているかを、まったく分かっていませんでした。



